萌尽狼グ

同人音楽サークルkaguyadepth代表、萌尽狼(もえつきろ)の個人ブログ

電子キーボードにDJ機能を最初に付けたのはヤマハ?カシオ?どっち?

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acworksさんによる写真ACからの写真

あれから40年!

というと綾小路きみまろさんみたいですが、前記事では1980年1月に発売されたカシオトーンCT-201というスピーカー内蔵キーボードの登場によって電子楽器業界に革命が起き、電子キーボード市場の覇権をめぐってカシオとヤマハが熾烈な競争を繰り広げていたことを取り上げました。

スピーカー内蔵キーボードについていろいろ調べてみると、ヤマハにもDJ機能を搭載する電子キーボードがあることがわかり、ヤマハとカシオのどちらが先にDJ機能を搭載したのか?が気になりはじめました。

ところが、私にはライバルであるヤマハの電子キーボードに関する知識がまったくありません。すると、今度はヤマハのミニキーボードPSSシリーズが16年ぶりに復活するというニュースが飛び込んできました。

今回は、このニュースをまじえつつ手探りで調べたことをまとめ、ヤマハとカシオの電子キーボードに搭載されているDJ機能についてクローズアップしてみました。


ヤマハ・カシオの電子キーボードラインナップ

ブランド名

ポータトーンはヤマハの電子キーボードを総称するブランドですが、現在のカシオトーンはこのほど発売されたCT-S200で復活したブランドで同社のベーシックキーボードに属する電子キーボードです。

シリーズ呼称

各社のシリーズ呼称は次のように対応しています。低い価格から順に並べました。

ヤマハ カシオ
PSSシリーズ ミニキーボード
EZ-Jシリーズ 光ナビゲーションキーボード
PSR-Eシリーズ ベーシックキーボード
PSR-Sシリーズ ハイグレードキーボード

シリーズごとに詳しく見ていきましょう。

ミニキーボード

長らくカシオSA-46/76の独壇場でしたが、ヤマハが2019年11月20日に発売するPSS-E30 RemieとPSS-A50で16年ぶりにPSSシリーズが復活します。
両機種ともrefaceシリーズのHQ Mini鍵盤を搭載。PSS-A50はMIDIキーボードとしても使えます。昨年AKAIが発売したMPK Mini Playと同様の特徴を持っておりDTMerも注目です。
www.yamaha.com

光ナビゲーションキーボード

カシオが1994年に発売したミニキーボードMAGICAL LIGHT ML-1が世界初の光る鍵盤であり、その特許が切れるまでヤマハは同様の電子キーボードを発売することが出来ませんでした。
カシオは最新ヒットソングに対応するため毎年モデルチェンジしていますが、ヤマハは2012年7月発売のEZ-J220から新機種が登場していません。
ja.wikipedia.org

ベーシックキーボード

このように低価格帯の光ナビゲーションキーボードがカシオの独壇場であるため、ヤマハの電子キーボードは中~高価格帯が主力ラインナップとなっています。
PSR-Eシリーズは低い価格から順に200番台、300番台、400番台の3系統に分かれており、200番台は300番台の廉価版という位置づけです。
jp.yamaha.com
このうち、今回注目したDJ機能が搭載されているのはPSR-Eシリーズの400番台です。
なお、300番台にはダークウォルナット調とメイプル調の2種類から選べるデザイン性が高いインテリアモデルPSR-E360が新たに加わりました。
jp.yamaha.com

ハイグレードキーボード

シーケンサーを搭載し作曲機能が充実しているモデルです。オールインワンシンセサイザーやミュージックワークステーションと同種のものです。
各社の最新技術がふんだんに盛り込まれていますが、そのぶん価格も非常に高価で、ヤマハPSR-Sシリーズの初期モデルPSR-S900はなんと21万円もしたそうです。
jp.yamaha.com


PSR-Eシリーズの400番台とカシオトーンを比較

ここからが本題です。まずDJ機能を搭載するPSR-Eシリーズの400番台を順に追って機能の変遷を把握し、その頃カシオのダンスミュージックモードはどうだったのかをおさらいします。

ヤマハのタイムライン

2004/6/1

ポータトーンPSR-295発売
(PSR-Eシリーズ400番台の基になった機種)

2006/6/1

ポータトーンPSR-E403発売
(2つのサウンドコントロールノブ、ピッチベンドホイールを初搭載)

2008/6/1

ポータトーンPSR-E413発売

2010/6/1

ポータトーンPSR-E423発売

2012/6/1

ポータトーンPSR-E433発売
(10種類のDJパターン機能を初搭載)

2014/6/1

ポータトーンPSR-E443発売
(20種類のDJパターン機能。クロスフェード、リトリガー機能、AUX IN、アプリ連携を初搭載)

2016/5/1

ポータトーンPSR-E453発売
(25種類のDJパターン機能。最大同時発音数が32音から48音に増加)

2018/6/1

ポータトーンPSR-E463発売
(35種類のDJパターン機能。クイックサンプリング、クライマックス機能を初搭載)

カシオのタイムライン

2016/11/上旬

ベーシックキーボードCTK-2550発売
(ダンスミュージックモードを初搭載。最大同時発音数48音)

  • プリセットパターン50種類(EDM35種類、ハウス10種類、ヒップホップ5種類)
  • ダンスミュージックエフェクト4種類(LPF、HPF、フランジャー、ローファイ)
  • 自動盛り上げ6種類(ピッチ、チェンジ、ロール、フィルター、ゲート、エンディング)

2017/3/3

ベーシックキーボードCTK-950K発売
(この機種のみ最大同時発音数32音)

2017/3/11

ベーシックキーボードCTK-3500発売

2017/9/下旬

光ナビゲーションキーボードLK-128発売

2018/8/28

光ナビゲーションキーボードLK-311発売

2019/9/27

カシオトーンCT-S200RD/BK、CT-S300発売
(ダンスミュージックボイスを初搭載)

2019/10/4

カシオトーンCT-S200WE発売

機能比較

発売時期

ヤマハは2012年6月からDJ機能を搭載(ポータトーンPSR-E433)
カシオは2016年11月からDJ機能を搭載(ベーシックキーボードCTK-2550)

搭載機種・価格帯

ヤマハは高価格帯にのみDJ機能を搭載(ポータトーンPSR-Eシリーズの400番台)
カシオは低価格帯にのみDJ機能を搭載カシオトーンを含むベーシックキーボードおよび光ナビゲーションキーボード)

パターン種類

ヤマハは最新機種PSR-E463で35種類(エレクトロ4種類、ダンスポップ5種類、ユーロダンス9種類、ハウス種類、トランス4種類、ヒップホップ2種類、チルアウト2種類、ダブ2種類、ワールド7種類)
カシオは全機種で50種類(EDM35種類、ハウス10種類、ヒップホップ5種類)

機能の拡充

ヤマハはPSR-E443でクロスフェードとリトリガー機能を、PSR-E463でクイックサンプリングとクライマックス機能を追加。
カシオはCT-S200でダンスミュージックボイス機能を追加。なお自動盛り上げ機能は全機種に搭載。

サンプリング機能

ヤマハは最新機種PSR-E463にサンプリング機能を追加した。
カシオはサンプリング機能とダンスミュージックモードを入れ替えた。

最大同時発音数

ヤマハは32音。ただし2016年5月発売のPSR-E453から48音。
カシオは48音。ただし2017年3月発売のCTK-950Kのみ32音。


あとがき

電子キーボードに最初にDJ機能を搭載したのはヤマハという結論になりました。
しかし、ターゲット層が大きく異なるため、どちらか一方が優れているとは言えない状況です。

カシオのダンスミュージックモードはカシオトーンCT-S200が発売されるまで、メーカーサイドでもユーザーサイドでもまったく話題になっていないようでした。

CTK-2550は現在も標準61鍵盤の電子キーボードとしては最安値なのでユーザー層も厚く、ヤマハ音楽教室の現役ピアノ講師まきのさんのブログなど有用な情報も見つかりました。
piano-no-sensei.com

また、ケーズデンキ限定モデルのCTK-950Kはメルカリやジモティーが検索に引っかかり、手放す人がいるほどには出回っていることがわかりました。
中には当時1歳半の娘に与えたら踏まれてしまったCTK-950Kも…パパはダンスミュージックモードのすごさに気づいていますが…
bellx.hatenadiary.jp

こうした機種と比較すると、PSR-Eシリーズの400番台はモデルチェンジするごとにDJ機能が充実していくのでそのたびに話題になりますし、キーボードの機能を使いこなして人とは違った音楽表現を楽しみたい人がターゲットになりますよね。
鍵盤が弾けなくても気軽にDJプレイが楽しめる点では共通していますが、ツマミをいじってるだけでサマになるのはヤマハだけですよね。
jp.yamaha.com
jp.yamaha.com

それにしてもカシオはなぜ低価格帯にのみDJ機能を搭載したのでしょう?モーニング娘。が早くからEDMを取り入れていた事は知られていますが、そうした影響もあるのでしょうか?
またダンスミュージックモードは2016年11月の発売から基本的に何も変わっていませんが、ヒャダインさんのこの発言はミュージシャンとして本気で言ってるのかも気になります。

メインは完全にEDMとヒップホップなんですよ。めちゃくちゃ“今”じゃないですか。

https://natalie.mu/music/pp/casiotone

この辺は知り合いのDJさんに教えを請いつつ、私自身がEDMについて詳しくなるしかないかなー?と思っています。
CT-S200のダンスミュージックモードを現役DJが斬る!みたいな企画誰かやりませんかねー?

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https://twitter.com/kaguyadepth/status/1189912795896152064

ちなみにポータトーンのラインナップはこんな感じで状況を把握しました。まさに手探り(笑)