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同人音楽サークルkaguyadepth代表、萌尽狼(もえつきろ)の個人ブログ

令和のカシオトーンは令和のSC-55?CT-S200/300の内蔵音源を徹底解説!

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前記事令和のカシオトーンCT-S200/300の内蔵音源はAHL音源であることを突き止めましたが、今回は本機を使いこなすうえで知っておきたいMIDIやオーディオ信号の流れ、音源仕様について詳しく解説したいと思います。
上図は本機と同じ音源を搭載するCTK-3500のMIDIインプリメンテーションを参考にまとめたものです。

本機の構成

本機は大きくパフォーマンス・コントローラー・セクション、サウンド・ジェネレーター・セクション、アンプの3つに分かれています。
このうち、MIDIで制御されているのはパフォーマンス・コントローラー・セクションとサウンド・ジェネレーター・セクションの2つです。

パフォーマンス・コントローラー・セクション

パフォーマンス・コントローラー・セクションは、演奏者による鍵盤やピッチベンドホイールの操作、もしくは本体内蔵シーケンサーの自動演奏によるMIDI入力が発生する部分です。
本体内蔵シーケンサーのうち、デモ曲再生、ソング再生、レッスン機能、ダンスミュージック再生はMIDI出力されません。
また、MIDI出力される鍵盤演奏やホイール操作、自動伴奏機能による演奏は、無料アプリ「Chordana Play」との連携に使用されています。

ペダル接続時

別売のペダルを本機ペダル端子に接続した場合、初期設定ではコントロールチェンジ64(ホールド1)が入出力されますが、コントロールチェンジ66(ソステヌート)、コントロールチェンジ67(ソフト・ペダル)、スタート・ストップ(再生・停止ボタン)に設定変更することも可能です。

サウンド・ジェネレーター・セクション

サウンド・ジェネレーター・セクションはいわゆるMIDI音源と呼ばれている部分です。MIDIを受信しAHL音源からさまざまな楽器音をオーディオ出力します。
大きくサウンド・ジェネレーター共通部と楽器パート部の2つに分かれています。

サウンド・ジェネレーター共通部

共通部は、システム・エフェクト(リバーブ)やマスター・コントロール(マスター・ボリューム、マスター・チューニング)などから構成されます。
これらはシステムエクスクルーシブで制御できます。システムエクスクルーシブの詳しい仕様はCTK-3500のMIDIインプリメンテーションをご参照ください。

楽器パート部

楽器パート部は16の楽器パート(MIDIチャンネル)毎にAグループ、Bグループに分けられており、合計32の楽器パートから構成されています。
Aグループはインターナル(パフォーマンス・コントローラー・セクションが制御する)、Bグループはエクスターナル(外部から制御できる)とMIDI信号の流れは完全に分離しています。
これにより、パソコンやスマホからのMIDIデータ再生中に、鍵盤を演奏しても音化けしないようになっています。

ダンスミュージックモード

詳しい仕様は非公開です。Aグループの中にあるため、外部MIDIによって制御することはできません。
またBグループと同時に演奏することは可能ですが、外部MIDIBPMなどは同期しません。

ダンスミュージックエフェクト

ダンスミュージックモード時の左半分の鍵盤にアサインされているドラムパート、ベースパート、シンセパート1・2のみに効果がある4種類のエフェクター(MOD LPF、MOD HPF、FLANGER、LO-FI)です。
Aグループのプリセット音色またはダンスミュージックボイス、またはBグループに対しては効果がありません。

ダンスミュージックボイス

ダンスミュージックモード時にVOICEボタンを押すことでプリセット音色と切り替わり、右半分の鍵盤にアサインされる12種類のシャウト・シングボイスです。
取扱説明書の音色リストに未掲載かつ、ダンスミュージックエフェクトは効果がかからない音色です。

サウンド・ジェネレーターの仕様

本機に搭載されているAHL音源はGMGeneral MIDI System Level 1)準拠のため、他社GS・XG規格と比べると物足りないかもしれませんが、旧機種と比べカットオフ、レゾナンス、アタック、リリースのコントロールチェンジに対応したことで音色エディットが可能になり、電子キーボードとしては必要十分な機能を有していると言えるでしょう。
とはいえ音色によっては最大同時発音数が24音とGM規格の最低水準であり、またローランドSC-55のようなボイスリザーブ機能もないため、特にマイナスワンのMIDIデータを作成する場合は発音数オーバーに注意が必要です。内蔵ソングが比較的シンプルなアレンジになっているのはこうした事情があるのです。

最大同時発音数

本機の最大同時発音数は48音です。ただし、音色によっては最大同時発音数が24音に半減します。
言い換えると1ボイス音色と2ボイス音色があるということです。
どの音色が1ボイスか2ボイスかは非公開ですが、音色によっては旧機種の取扱説明書に記載がある場合があります。これについては別記事にまとめたいと思います。

音色リスト

本機のプリセット音色は400種類です。内訳はステレオグランドピアノ1音色を含む266種類と、GMトーン128種類、ドラムセット6種類です。
一部音色はGMトーンと重複があります。これについては別記事にまとめたいと思います。

複数ドラムセットの使用

GM規格ではチャンネル10がドラムセットに割り当てられていますが、本機はドラムセットが音色に含まれているため、ドラムセット音色のプログラムチェンジとバンクセレクトMSBを送信することで全てのチャンネルでドラムセットが使えます。GS・XG規格のようにシステムエクスクルーシブを送信する必要はありません。

受信可能なコントロールチェンジ

No. コントロールチェンジ 備考
0 バンク・セレクトMSB
1 モジュレーション
5 ポルタメント・タイム
6 データ・エントリーMSB
7 ボリューム
10 パン
11 エクスプレッション
32 バンク・セレクトLSB 無視される
38 データ・エントリーLSB
64 ホールド1(ダンパーペダル)
65 ポルタメント・オン/オフ
66 ソステヌート
67 ソフト・ペダル
71 フィルター・レゾナンス
72 リリース・タイム
73 アタック・タイム
74 フィルター・カットオフ(ブライトネス)
84 ポルタメント・コントロール
91 バーブ・センド・レベル
100 RPN LSB
101 RPN MSB
120 オール・サウンド・オフ 発音中のボイスが消音される
121 リセット・オール・コントローラー 各演奏コントローラーの値が初期化される
123 オール・ノート・オフ 発音中のボイスがリリースされる
124 オムニ・オフ オール・ノート・オフと同じ動作
125 オムニ・オン オール・ノート・オフと同じ動作
126 モノ・オン オール・サウンド・オフと同じ動作
127 ポリ・オン オール・サウンド・オフと同じ動作

特に気をつけなければならないのは124~127(オムニ・オフ、オムニ・オン、モノ・オン、ポリ・オン)受信時の動作です。
コントロールチェンジの詳しい仕様はCTK-3500のMIDIインプリメンテーションをご参照ください。

音源のリセット方法

本機の各種設定を初期化するには、電源を入れ直すか、システムエクスクルーシブを送信します。
システムエクスクルーシブは、GMシステムオフを送信することで電源を入れ直したときと同じ状態になり、GMシステムオンを送信することでGMレベル1互換モードにリセットされます。
システムエクスクルーシブの詳しい仕様はCTK-3500のMIDIインプリメンテーションをご参照ください。

システム・エフェクト

コントロールチェンジ91(リバーブ)のみ対応しています。
コントロールチェンジ93(コーラス)や94(ディレイ)はありません。あらかじめコーラスの効果がかかった音色がいくつかありますのでそちらをご利用ください。
バーブ・タイプは10種類(ルーム1~4、ホール1~4、スタジアム1~2)あり、システムエクスクルーシブで変更できます。
システムエクスクルーシブの詳しい仕様はCTK-3500のMIDIインプリメンテーションをご参照ください。

令和のカシオトーン完全に理解した!

本機の音源仕様を見て、往年のDTMerはピンと来たかもしれません。そう、ローランドSC-55に近いスペックなのです。
令和のカシオトーンは令和のSC-55と言えるかもしれません。
しかも本機固有のシステムエクスクルーシブはリバーブ・タイプだけでチェックサム計算も不要ですし「令和のカシオトーン完全に理解した」と胸を張ってもいいと思います。
完全に理解した音源でやるDTMなんて今までありましたか? なんだかワクワクしてきませんか!?
楽器店でCT-S200/300を見かけたらぜひチェックしてみてください!!

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